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2019-04-21
天球と最遠平面の同一視について
天文学でいう「天球」と生物学者のユクスキュルが提起した「最遠平面」を説明なしに同一視してきた(関連記事)が、違いを確認しておく。

天球は地球を核とする完全な球。または、地球を球形ではなく平板な大地と考えた場合は、大地をおおう半球。
完全な球とされる場合の天球は、全天体を容れる大きさでなければならないが、具体的なサイズは定まらず、無限大と見なされる場合もある。半球とされる場合の大きさは、月や太陽が昇る大地の東端からそれらが沈む西端までの距離にもとづき、この距離を直径とする。この場合も具体的サイズは定まらないが、有限である。

天球は幾何学的概念で、最遠平面は生理学的現象。
天球は論理的で、最遠平面は生理的。
天球は思考によって組み立てられた宇宙のイメージで、最遠平面は視覚が写し取った遠方のイメージ。どちらも現実の宇宙とは別物だが、とくに天球は現実との乖離が大きく、急所を突かれると宇宙の容器としては破綻する。

天球の急所はその実寸。
実サイズを問題にしないか、または無限と見なすなら、全天体を容れる大きさを保てるが、具体的なサイズに言及されると、全天体が収容できないどころか地球ひとつさえ容れることができず、半径 5 km からせいぜい 10 km ほどであることが明らかにされて、地球の上に乗った小さな半球ということになる。


参考記事: 天球の大きさのこと

ここに至って天球と最遠平面はサイズが一致する。また、世界を映すスクリーンとしての役割も一致する。
どちらも仮想的なものである上にサイズも役割も一致するのだから、同一視してさしつかえない。
両者の違いは、用語としての使い分けだけ。「天球」は天文を論じる場で用いられ、「最遠平面」は人間(や動物)の視覚や行動を論じる場で用いられる。