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2019-04-22
天球を金属製と見た古代民族の例
天球は仮想的なもの、と昨日の記事「天球と最遠平面の同一視について」で書いた。
現代の常識のうちで話をするならそれで問題はないが、昨日の文脈で論拠に使ったのはいけない。いずれ修正のこと。

とりあえず、天球を金属製と見た古代民族の例。


図はカルデア人の宇宙観をイラスト化したもの。カルデアはメソポタミア南東部を指す歴史的呼称。
彼らの宇宙観では、大地は周囲を海に囲まれている。
中央にそびえる高山のいただきは雪におおわれ、そこからユーフラテス川が流れ出す。
周囲の海は誰にも越えることのできない大洋で、その外側は高い壁でさえぎられた神々の領域。
外側の壁の上に、半球状の天が置かれている。
この天は、天地が別れる前に生まれでた神々の一人マルドゥクが硬い金属でつくったもので、昼間は日光にかがやき、夜は暗青の地色に星々が散りばめられる。
半球の北側に半円状の管がとおっていて、図にはその東西の出口が描かれている。朝になると太陽がその東の出口から昇り、夕方西の口に入る。夜のあいだに太陽は管のなかをすべって、翌朝ふたたび東の口から出て運行をはじめる。

参考資料: アーレニウス著、寺田寅彦訳『史的に見たる科学的宇宙観の変遷』