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2019-05-24
モノー『偶然と必然』における「合目的性」
合目的性、自律的形態発生、複製の不変性。
生物を生物以外のものから区別する最も一般的な特性として、ジャック・モノーの『偶然と必然』はこの三つをあげている。

「合目的性」は誤解されやすいが、日本語版(渡辺格、村上光彦訳、みすず書房)の訳者あとがきに「生物の根本的な特性は、遺伝情報の複製能力であり、合目的性はその結果であり、複製の間違いが進化の要因となっている」、「『合目的性』というのは、進化の結果として、生物という分子機構がもつことになった属性にすぎない」などとあるのが正しい。生物はあらかじめ設定された目標に向けて進化するのではなく、結果的に目標があったかのごとく見えるにすぎない。

次の引用は、トッド・E・ファインバーグ、ジョン・M・マラット著、鈴木大地訳『意識の進化的起源』(勁草書房)から。『偶然と必然』における「合目的性」の簡潔な説明になっている。

「あらかじめデザインされた」目的を受け入れることは、目的論的思考だとわかっている。あるプロセスの結果をそのプロセスの原因とすることであり、それは論理的に不可能な大間違いである。進化は現在の状況に適応するのであり、時間を経て段階的に進行はしうるが、未来の目標に向かっているのではない。
目的論的思考の罠を避ける方法はある。確かに生物学的構造には、たとえば噛むという歯の機能など、適応的機能がある。設計やデザインという含意なしにこの種の目的を認識するために、生物学者のジャック・モノーは目的律 [teleonomy] という語を導入した。

太字は訳文どおり。ここで「目的律」の訳語を当てられているのは、『偶然と必然』で「合目的性」と訳された語と同じteleonomy(モノーの原著では téléonomie)。