to top page
2019-02-01
時の遊水地
アメリカで日本の80年代シティポップがはやってるという。

80年代へのノスタルジーといえばアメリカで日本の80年代シティポップが流行ってるという話もあって、面白いのがアメリカの若者は自国の消費し尽くされた過去の記憶にもはや純粋なノスタルジーを感じることができなくて代わりに他者の記憶にノスタルジーを求めてるという指摘 (kizawaman02さんのツイート

世界のあちこちのあれこれのカルチャーの場には、ところによって時間を滞留させる遊水地か溜め池のようなものがあり、よそでは消えたトレンドがそこでは長くとどまっている――というのがある。これもその例ではないか。
アメリカの動向も80年代の日本のポップスも知らないから、自分のアンテナに届く範囲での話だが、台湾では日本の古い歌謡曲がえんえんと歌い継がれている。

前にあげた「深情難捨」もその一つ。



同じメロディで歌詞の異なる「深情難忘」というのもある。
オリジナルは1938年(昭和13年)に東海林太郎の歌で発売された「上海の街角で」。
日本ではとっくに忘れ去られたこの曲が、台湾では何人もの歌手によって今も歌われている。アマチュアが歌ったり演奏したりするビデオも YouTube にある。
次のビデオも同じ曲だが、歌がはじまる前に二人の男性がこの曲について長い会話をかわしている。この曲が台湾でたいせつにされている現れと見た。



自分のことにもどると、テレビの懐メロ番組は見る気にならないのに、 YouTube で台湾版の日本歌謡をあさるのは心地よい。ド演歌に収斂してしまう前の昭和歌謡が、台湾の遊水地で保存されているのだという気がする。

関連記事
- 日本の戦前歌謡が台湾で歌い継がれていること
- 台湾でスタンダード化した日本の年代物歌謡曲