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2015-12-30
城山の時代
城山の斜面に沿って時間が傾斜しているという。
見に行くと、ふもとに広い駐車場ができていて、人や車でにぎわっている。観光名所みたいになっているらしい。
他の人といっしょに城山を登る。
下から見たときは普段の城山公園だったが、登るにつれて風景が変わり、畑になったり、雑木林になったり、わらぶき屋根の家があったり、そうかと思うと、急にすすきの群れが満開の桜に変わったりして、時間をさかのぼっているのだと判る。
そろそろ頂上かというあたりで、急に騒がしくなる。
人が駆け降りてくる。
「来るな、来るな」と叫んでいる。
青い顔をして、人にかかえられて降りてくる者がいる。見送ると背中に矢が突き立っている。
つぎつぎに人が駆けてくる。頂上の山城からさかんに矢を射かけられたという。鉄砲の音もするという。どうやら頂上は戦国時代であるようだ。
こわくなって自分も逃げかかる。斜面に沿って時間が傾斜しているなら、今いるあたりは戦国時代ではなかろうとも思ったが、矢や鉄砲玉が飛んできてはいやだから、足はふもとに向いてしまい自分も走りだす。

駐車場まで駆けもどって息をついていると、救急車が来てけが人を収容しはじめた。
市役所の観光課だという人たちがきて、城山公園の登り口にロープを張り、立入禁止の看板を立てる。
観光課の人の説明。「当時この城は北条方に属していたので、豊臣勢の攻撃を受けているところと考えられます。戦闘の集結が確認された時点で、立入禁止の解除を検討します」
時間の傾斜がふいにはじまったものなら、立入禁止とか解除とか言ってるうちにも傾斜が消えてしまわないか。そう思ったが、観光事業に水を差すような気もするから、言わずに帰ってきた。
昼食は握り飯と目刺しの焼いたのにしようと思う。たくわんも少し切ろうか。
戦国時代の弁当がどんなものだったか知らないが、なんとなく戦国気分になっている。