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2015-11-26
吸血鬼対ゾンビ
黄金町の劇場に芝居を見に行く。
知り合いが劇団をつくったといって、招待状を送ってきた。
はじめての土地で途中迷ったが、開演にはまにあう。

芝居がはじまる。
第1場=満州を南下する列車のコンパートメント。
登場人物=吸血鬼の頭目と12人の手下。
4人部屋だから13人は入れない。そこで手下役の3人が4役ずつ受け持って計12人という計算。台本の無理を演出で補ったようだ。
一行がウラル地方から来た吸血鬼であることが、彼らの会話からわかる。さらに、清国を荒らして仲間を増やそうという意図が明らかになる。
そのへんで客席が騒がしくなる。
「勝手な真似はさせん」
「こらしめてやる」
そんな声が聞こえたかと思うと、10人ほどのゾンビが立ち上がって舞台に駆け上がる(これも演出なのか)。清朝のゾンビだからか、動きが映画で見たキョンシーに似ている。両足をそろえてぴょんぴょん跳ねる。
舞台上のバトル。ゾンビに噛み付かれた吸血鬼はゾンビにされてしまう。逆に、ゾンビに噛みついた吸血鬼も、ゾンビの血を吸ってゾンビに変わってしまう。似たもの同士のようでも、生きている吸血鬼より死んでいるゾンビのほうが強い。そのため全員がゾンビになって、ドラマの展開が行き詰まる。

近所の集会場を借りて打ち上げのパーティー。
料理は豆やキャベツの煮物、もうしわけ程度にソーセージが添えてある。
ゾンビの登場は演出ではなかった。本物のゾンビが客席に入り込んでいたのだ。
アクシデントで出番のなくなった主演女優を演出家がなぐさめている。
「あいつの台本が隙だらけで、つけ込まれた」
と演出家がこちらを指さす。
意図はわからないが、まったくのでたらめ。ところが演出家の言うことを信じた女優がテーブルを飛び越えてつかみかかってくる。
うっかり「かんべん、かんべん」と言ってしまう。それで今回の公演の失敗は自分のせいだと劇団員たちに思い込まれ、豆やキャベツを投げつけられる。

集会場を飛び出すと、主演女優も追ってくる。
女優の走り方がおかしい。こいつもゾンビ(キョンシー)になりかかってるのか。
道がわからないから、いくら逃げても黄金町から抜け出せない。