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2019-07-13
巻上公一のファシズム・オリエンテッドな2枚
10年の時間をおいて作られた巻上公一の2枚のカバー曲集――『民族の祭典』(1982年)と『殺しのブルース』(1992年)――は、どちらもファシズムを指向している。たまたまタイトルやデザインを通じて巻上の無意識が露出してしまったというのではなく、意図した指向のはずだが、その理由はわからない。

『民族の祭典』

[収録曲]
01: 森の小人
02: 国境の町
03: 桑港のチャイナ街
04: アルタネイティブ・サン
05: 私の青空
06: イヨマンテ(熊祭)の夜
07: おおブレネリ
08: マボの歌
09: 赤い靴
10: 不滅のスタイル

「民族の祭典」というタイトルは、レニ・リーフェンシュタールが監督したベルリンオリンピックの記録映画の邦題と同じ。映画はナチスの全面的な協力のもとで制作され、ヴェネツィア国際映画祭で最高賞(ムッソリーニ杯)を獲得した。巻上がこれらのことを知らなかったとは考えられない。

『殺しのブルース』

[収録曲]
01: さいざんすマンボ
02: 女を忘れろ
03: 待ちぼうけの喫茶店
04: 悪人志願 -雨と風の詩-
05: すきやきエトフェー
06: 夜空の笛
07: 東京の屋根の下
08: 帰ってきたヨッパライ -ニューヨーク・ヴァージョン-
09: うつろ
10: マリアンヌ
11: 殺しのブルース

『殺しのブルース』のジャケット写真は荒木経惟撮影。
詰め襟服で酷薄な表情を見せているのが巻上公一。詰め襟はムッソリーニを装ったはず。裸の胸を見せているモデルは愛人のクララ・ペタッチといったところ。横顔のイラストは出典がわからないが、ピカソの「ゲルニカ」を思わせる。ならばこのジャケットはスペインのファシズムをも指していることになる。
これらの推測がまちがっているとは思えないが、なにゆえのファシズム指向だったのか。

※上の2葉の画像は再発時の CD 版のジャケットで、オリジナルの LP 版とは文字の色や配置などが異なるが、基本的な構図は同じ。