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2019-06-09
エンゲルスが種間闘争を好み種内闘争を嫌ったこと
エンゲルスはダーウィンの進化論を高く評価したが、それは生物が進化するものであるとの主張に対してであって、進化のメカニズムである生存闘争については否定的だった。細かくいえば、エンゲルスは異なる種間の闘争を好み、同一種内での闘争を嫌悪した。以下の引用は、『マルクス=エンゲルス全集』第20巻(大月書店)から。

経済学者たちが最高の歴史的偉業として賛美している自由競争、生存闘争が、動物界では正常な状態であることをダーウィンが立証したとき、彼は自分が書いたものが人間にたいして、またとくに自分の同国人にたいして、どんなに辛辣な諷刺となっているかを知らなかったのであった。 ――『自然の弁証法』「序論」

生存闘争についてのダーウィンの全学説は、ホッブスの「万人の万人に対する闘争」と競争についてのブルジョア経済学説、それにマルサスの人口論を、たんに社会から生物界に移しいれたにすぎない。 ――『自然の弁証法』「生物学」

歴史を一連の階級闘争としてとらえる歴史観のほうが、歴史をわずかずつしか差異のない生存闘争の諸局面にたんに還元してしまうことよりは、はるかに内容に富み、はるかに深い。 ――同前

種間か種内かによって好悪が別れるのは、マルクスが階級間の闘争を至上の歴史メカニズムとして――さらには歴史そのものとして――肯定する一方、階級内の闘争を嫌悪したことと相似。

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