to top page
2019-03-13
あの月を取ってくれろと子が泣いたわけ
小林一茶の句、

名月をとってくれろと泣く子かな

この句で月が欲しいと泣いた子供は、月を取ることはできないと知りながらぐずったのではなく、取れそうに見えたから欲しがったのだろう。すなわち、幼児における視覚の未発達が生んだ句。
関連記事: 天球の半径

物理学者のエルンスト・マッハが、一般向けの講演会で次のようなことを言っている。卵からかえったばかりの雛鳥は、いちはやく穀粒をついばむなどして、人間よりも成熟した空間認識を持って生まれてくるとわかるが、

人間の方は、生後数カ月たってすら、月をつかもうと手を伸ばす程です

と。マッハ「時間・空間に関する一考察」(野家啓一編訳『時間と空間』所収)より。

一茶の観察範囲だけでなく、西欧のマッハの周辺でも同じことが起きていた。
「幼児は月を取ろうとするものである」
と一般化してもいいのではないか。