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2016-01-06
R語録
アラブ世界のどこか。危険地帯。
窓のない部屋で、五、六人の男がバスを待っている。外で待つと危険だから建物の中で待つ。男たちのうち一人は日本人、他はアラブっぽい顔と服。
ドアがノックされる。開けると銃を持った男たちが入ってきて、前からいる男たちを人質にする。
日本人の男に銃口が向けられる。すぐにも撃たれそうで怖い。撃たれなくても、暴発はありうる。人質の味わう恐怖とはこのようなものかと思う。

日本の商店街を男が歩いている。アラブで人質になった日本人と似ている。
路上生活者らしい男(R)が、その日本人に似た男(N)に近づいてきて、
R「おたく、新聞に出てたろう」
N「わたしが? そうなんですか」
R「自分のことなのに知らなかったのか。いいなあ、おたくら普通人はのんきで」
N「のんきですか」
R「のんきだよ。じゃあ、このコンビニのことも知らないのか? 知っててここにいるの、知らないでいるの?」
目の前のコンビニをRが指さす。いつものようにコンビニがそこにある。
RがNに教える。コンビニの裏側が倉庫になっていて、その倉庫でNは人質にされてたのだという。
言われてNも、ようやく自分が人質事件の当事者だったらしいと思い出す。事件が解決してコンビニも普段通りの営業にもどったのだ。
R「昼飯の帰りかい?」
N「ええ、会社にもどってひと仕事です」
そのように普通にしていられるのは事件が片付いたからだとRが言う。なるほどとNも思う。

語録。そのほかNがRから聞いたこと。
「おれたちは世界情勢くわしいよ。朝から晩まで新聞ばかり読んでるからな」
「死なないように生きる。これがけっこう難しい」
「路上生活でだいじなのは、ひとの縄張りに立ち入らないこと」