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2014-11-14
人間は目が悪い
鳥が飛んでる。

鳥に見えないことはない。鳥なのだろう。

魚が泳いでる。

虚心に見れば、灰色のバックに黒い線が引いてあるだけ。
それが魚に見えてしまう。
その程度には人間は目が悪い。

ネコはもっと目が悪い。
生物学者・日高敏隆の実験。
a. 画用紙にネコの絵をかいて飼いネコたちに見せた。子ネコやメスネコは絵ネコの顔のあたりの匂いをかいだ。オスネコは尾の付け根あたりの匂いをかいだ。本物のネコでないとわかると、ネコたちは絵のネコに関心を失った。
b. 大きな紙にマジックペンで窓の絵をかいて壁に貼りつけた。窓の片側が外にむかって開いているようにかいた。そうしておいて大きな物音でネコをおどかすと、驚いたネコは部屋から脱出しようとして絵の窓に激突した。
どちらの実験でも経験は蓄積しなかったと日高氏は言っている。時間をおいて同じ実験を繰り返すと、そのたびにネコたちは同じ反応をした。

以上は日高敏隆『人間と動物の世界認識』による。
以下は日高氏の論旨とは別。
ネコは立体物と平面図を区別できなかった。
つまりネコは目が悪い。
だけど人間はもっと目が悪い。
ネコたちは絵が実物と違うことを知ると関心を失った。
人間はそうではない。いつまでも実物と絵を同一視して、王侯や神仏の像をあがめ続けたり、裸体画を見て色情をもよおしたりする。人間は目が悪い。