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2012-12-20
出会わない二人――『大菩薩峠』はすれ違いドラマ
『大菩薩峠』を読まずにすますプロジェクト、その5。

昨日のグラフを再掲。


上は、机竜之助と米友の登場回数を比較したもの。
黒線が机竜之助、赤線が宇治山田の米友。横軸が巻数、縦軸が登場回数を示している。
まずわかるのは、竜之助の登場が減るにつれ米友の登場が増えていること。
もう一つ、これははっきりしないのだが、竜之助と米友はあまり出会っていないのでないかということ。
竜之助が引っ込むと米友が現れ、米友が引っ込むと竜之助が現れる。そんな関係に見える。

そこで両者の出会いの回数を調べてみた。
考え方は次の通り。
『大菩薩峠』の各巻を10段落(10論理行)ずつのブロックに分け、各ブロックについて「竜之助」と「米友」の文字が含まれているかを調べる。
両方の文字が含まれていたら、そのブロックで両者の接触があったと見なす。
10段落という量は、ふつうの小説本なら1ページから2ページ分にあたる。つまり、本を開いて「竜之助」と「米友」の両方の文字が目に入ってきたら、両者のあいだに何らかの接触・交渉があったと見るわけである。

そういう考え方で両者の接触を調べた結果が次のグラフで、縦軸が接触回数。



やはり二人の接触は少ない。最大でも1巻で13回。
有意と言えそうなのは、グラフがピークをなす6、17、36、40巻と、ピークの斜面でわかりにくいが、18、19巻くらい。
A が現れると B が引っ込み、B が現れると A が引っ込む。
ジキル博士とハイド氏みたいではないか。
同じコインの裏表である竜之助と米友をいかに出会わせるか。
それが『大菩薩峠』の主要な課題だったのかも。現段階ではまだ仮説未満だが、そんな気がする。

竜之助と米友の接触を調べる Awk スクリプト。
FILENAME != filename {
    filename = FILENAME
    print counter
    counter = ryunosuke = yonetomo = 0
}
/竜之助/ { ryunosuke++ }
/米友/ { yonetomo++ }
FNR%10 == 0 {
    if (ryunosuke && yonetomo) counter++
    ryunosuke = yonetomo = 0
}
END { print counter }