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2012-05-27
ジキル博士とハイド氏のために
ジキル博士はどうすればよかったのか。
ハイドが自分であることを、ジキルがパブリックに認めればよかった。
はい、ハイドはわたしです。自分のしたいことをしたいようにしているときのわたしがハイドです。若々しいし、中年太りのわたしと違って細身だし、身のこなしだって軽いし。かわいいでしょ。え? 誰が見てもぞっとする嫌な顔をしてるって? いや、まあ、そうなんでしょうが、なにしろわたしですからね、嫌なやつにきまってます。
でも、それがジキルはできなかった。
なぜできなかったか。破滅を恐れたから。社会的な地位のあるハイドの破滅を。
破滅を恐れた結果が、ジキルとハイドの共倒れ。

ハイド氏の側から破滅を避けるとしたら。
ジキルが自分であることを、ハイドがばらしてしまう。
ああ、あの博士ね、まともな社会人を装ってますが、じつはおれなんですよ。
そしてふだんはハイド氏としてふるまう。
必要なときだけジキル博士になる。
学会の発表とかでも、壇上に登るまではハイド。
では、これから、ジキルとして発表いたします、みたいにする。