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2011-11-11
ぼくは昔…
もしかすると
ぼくは昔
コオロギだったかもしれない
人のいないところで
コロコロコンコロ
コオロギを真似て鳴いてみると
たしかに昔
ぼくはコオロギだった
ぼくがコオロギだったある秋
夕陽の差し込む納屋で
この家の少年と
姿を取り替えたのだったか
運を取り替えたのだったか
ぼくらは何かを取り替えたのだ
それから少年はどこへ行ったか
消えた少年がぼくならば
ぼくはいつのまにか
行方不明の旅からもどって
自分の家にいるのだから
ぼくは昔から
人間だったことになるのだが
消えた少年がぼくでなかったら
ぼくは昔
コオロギだったにちがいない
コロコロコンコロ