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2009-07-25
ポル・ポト
おれも社会のことを考えたりする
政治のことも考える
経済のことも考えたりする
ポル・ポトのこともときどき考える
ニッパヤシで葺いた屋根の下
木の枝で組んだベッドに横たわって
最後の裏切りを待つポル・ポトのことを
追い詰められた政治集団は
内部の裏切りを重ねて自壊するのだが
そんな政治哲学を
今さら語って何になるか
すべては虚妄だったのか
それともただの巡りあわせだったのか
黄疸で黄色く染まった身体をながめれば
もうおれが終わりだと
誰にもわかるはずなのに
それでも安心できない臆病者が
ベッドから半身を起こしたポル・ポトの前に
最後の飲み物となるソーダ水を置く
言い残すことなどない
わかっていて毒をあおぐのだと
そんなことも言いはしない
どこから来たか
水牛が一頭
小屋の外からこちらを見ている