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2018-06-28
自由意志否定論
自由意志というものはない。あるかのように我々が錯覚しているだけ。
このことを証明するのは無理としても、ある程度説得力のある形でまとめておきたいと思っていたのだが、無用か。マット・リドレー『進化は万能である──人類・テクノロジー・宇宙の未来』によると、すでに多くの科学者が自由意志は幻想だとしているという。
以下、すべて同書による。

心理学者で哲学者のニコラス・ハンフリーによれば、意識とは「あなたが自分の頭の中で自ら上演するマジックショー」。
生物学者のアンソニー・キャッシュモアによれば、どれほど自由に見える行動も「そのほんの数分の1マイクロ秒前までの、生物の遺伝的特徴と環境の歴史を反映しているにすぎない」。
著述家のサム・ハリスも自由意志は幻想だとして曰く、「思考と意図は、自分で自覚してもいなければ意識的に制御もできない、背景に潜む原因から現れ出てくる」と。
神経科学者のマイケル・ガザニガは、「〜に対する自由」を「〜からの自由」と言い換えて、次のように問う。
「私たちは何から自由でありたいと願っているのか? 自分の人生経験から自由でありたいとは思わない。決定には人生経験が必要だからだ。自分の気質から自由でありたいとも思わない。気質も決定を導いてくれるからだ。じつは私たちは、因果関係から自由でありたいとも思わない。因果関係は、予想に使うからだ」
要するに我々は因果関係から抜け出せない。すなわち自由意志は幻想である。

決定論と自由意志は両立するという説もある。これにに対して上のサム・ハリスが言うには、「操り人形は、自分を操る糸を好んでいる限り、自由である」。
自由意志否定論を述べるとしたら、操り人形の喩えは簡明で使いやすそう。
というわけで、あとは宗教論争。人類が生きているうちに決着するのか。しないのではないか。